50歳ごろから好発する胃がん
胃がんは、日本で多く見られるがんの1つです。中高年の男性に多く、ピロリ菌感染との関わりが深いがんです。男性ではおよそ11人に1人、女性ではおよそ24人に1人が一生のうちに胃がんになると推定されています。50歳前後から特に男性で罹患率が高くなるため、定期的な検査が重要となります。
胃がんの前兆となるサインや
初期症状は?
初期の胃がんは、自覚症状がほとんどありません。進行してからも症状が現れないケースも存在します。そのため、健康診断や胃カメラ検査などで偶然発見されることが多く、また早期発見すれば外科手術をしなくても、内視鏡手術で完治できるのが特徴です。
進行した場合に起こる症状
- 胃やみぞおちの痛み、不快感、違和感
- 胸やけ、吐き気、食欲不振
- 黒色便(病変部位からの出血による)、吐血、貧血
- 体重減少や食物の通過障害
胃がんになる原因
胃がんの最大の原因はピロリ菌感染です。ピロリ菌が胃粘膜に慢性的に炎症を起こすことで、正常だった胃粘膜の細胞ががん細胞へ変化することで起こります。
その他のリスク要因としては以下のような点が挙げられます。
- 塩分の多い食事
- 喫煙習慣
- 過度の飲酒
- 肥満
- 家族歴(血縁者に胃がんの既往がある場合)
胃がんのステージ
胃がんは進行度によってステージⅠ~Ⅳに分類され、治療方針の決定に重要な指標となります。
ステージⅠ期
概ね早期がんに分類され、5年生存率は95.6~96.3%と非常に高い数値を示します。
ⅠA期
胃の粘膜層にがん細胞が認められますが、リンパ節への転移はありません。この期であれば、内視鏡的な治療で完治が見込めます。
ⅠB期
がんが胃の粘膜層にとどまっていてリンパ節転移が1~2個ある場合、あるいはリンパ節への転移はないものの、粘膜下層以下へ浸潤が認められる場合にあたります。
ステージⅡ期
進行がんに分類され、5年生存率は68.5~70.7%となります。
ⅡA期
がんが粘膜層または粘膜下層にとどまりリンパ節転移が3~6個ある場合、固有筋層まで浸潤してリンパ節転移が1~2個ある場合、あるいは漿膜まで浸潤していてもリンパ節転移がない場合が該当します。
ⅡB期
がんが粘膜層または粘膜下層にとどまりリンパ節転移が7~15個ある場合、固有筋層まで浸潤してリンパ節転移が3~6個ある場合、漿膜まで浸潤してリンパ節転移が1~2個ある場合、あるいは漿膜を超えて胃の表面に出ていてもリンパ節転移がない場合が含まれます。
ステージⅢ期
さらに進行した状態で、5年生存率は41.3~43.2%となります。
ⅢA期
がんが固有筋層まで浸潤してリンパ節転移が7~15個ある場合、漿膜下組織まで浸潤してリンパ節転移が3~6個ある場合、または漿膜を超えて胃の表面に出てリンパ節転移が1~6個ある場合に該当します。
ⅢB期
がんが粘膜層や粘膜下層、あるいは固有筋層にとどまっていてリンパ節転移が16個以上ある場合、漿膜下組織まで浸潤してリンパ節転移が7~15個ある場合、漿膜を超えて胃の表面に出ていてリンパ節転移が7~15個ある場合、または胃の表面に出たうえで他臓器にも広がっており、リンパ節転移が1~6個ある場合が含まれます。
ⅢC期
がんが漿膜下組織まで浸潤していてリンパ節転移が16個以上ある場合、漿膜を超えて胃の表面に出ていてリンパ節転移が16個以上ある場合、あるいは胃の表面に出たうえで他臓器にも広がり、リンパ節転移が7個以上ある場合に分類されます。
ステージⅣ期
がんの深達度やリンパ節転移にかかわらず、他臓器への転移がみられる場合はステージⅣとされます。
5年生存率は5.9~6.6%となります。この段階では、外科的手術は行わず、化学療法、免疫療法、放射線治療、対症療法などが選択されることが多いです(ただし、例外はあります)。
胃がんの検査
胃カメラ検査(内視鏡検査)
胃カメラ検査は、内視鏡スコープを口または鼻から挿入し、胃や十二指腸、食道などを直接観察する検査です。胃をほとんど死角なく観察でき、特殊な光(NBI)や薬剤を使って病変部を強調したり、疑わしい組織を採取して病理組織検査を行うことが可能です。早期の胃がんを発見するのに最も有効な検査方法です。また、ピロリ菌感染の有無も調べることができます。
バリウム検査
バリウム検査は、バリウム(造影剤)を飲んでからレントゲンで胃の状態を調べる検査です。検診などで幅広く行われていますが、どうしても死角が発生してしまうため、早期の胃がんを発見するのにはあまり向いていません。また、ピロリ菌の有無を調べることもできません。バリウム検査で異常がなかった方でも、より確実な診断のためには胃カメラ検査をおすすめします。
胃がんの治療
胃がんの治療は、がんの進行度(ステージ)によって異なります。神戸三宮きのした内科消化器内視鏡クリニックで胃がんが発見された場合は、患者様のご希望に応じて適切な医療機関をご紹介いたします。
早期胃がん
早期胃がんの治療には、内視鏡治療と外科手術があります。リンパ節転移の可能性が極めて低い場合は、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)という治療を行います。これは内視鏡から電気メスを出して直接病変を切除する方法で、開腹を行わないため体への負担が非常に少ない治療です。胃の機能も保たれ、1週間程度の入院で済みます。
進行胃がん
進行胃がんの場合は、外科手術が基本となります。がんの広がりによって、手術前後に化学療法(抗がん剤治療)を併用することがあります。遠隔転移があり、がんが取り切れない場合は、がんの進行を抑えるための化学療法が中心となります。