- 胃の粘膜に生息するピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ菌)とは
- ピロリ菌に感染するとどんな症状が出る?
- なぜピロリ菌に感染するのか
- ピロリ菌をそのままにしておくとどうなる?
- ピロリ菌の検査
- ピロリ菌検査の費用
- ピロリ菌除菌治療の流れ
胃の粘膜に生息するピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ菌)とは
ピロリ菌(正式名称:ヘリコバクター・ピロリ)は、胃粘膜に生息する体長約4ミクロンの細菌です。胃の中は強い酸性環境であるため、通常は細菌も存在できないと考えられていました。しかし、ピロリ菌はウレアーゼという酵素を出して、自分の周りにアルカリ性のアンモニアを作り出すことで胃酸を中和し、胃の中での生息を可能にしています。
日本人の場合、60歳代以上の方の多くが感染していると言われています。これは、水道などのインフラが整っていなかった時期に幼少期を過ごしたためと考えられており、衛生環境が整った現在では若い世代の感染率は低くなっています。
ピロリ菌に感染すると
どんな症状が出る?
ピロリ菌に感染しているだけでは、多くの場合自覚症状はありません。しかし、ピロリ菌感染によって引き起こされる病気により、以下のような症状が現れることがあります。

- みぞおちあたりの空腹時の痛み
- 胃痛、胃もたれ、胸やけ
- 吐き気、食欲不振
- 腹部膨満感(お腹の張り)
- げっぷやおならの増加
- 黒色便(胃・十二指腸からの出血による)
- 口臭(ピロリ菌が作り出すアンモニアによる)
ピロリ菌が引き起こす病気
- 慢性胃炎(萎縮性胃炎)
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
- 胃がん
- 悪性リンパ腫
- 胃過形成ポリープ
- 機能性ディスペプシア
なぜピロリ菌に感染するのか
ピロリ菌の感染経路は完全には解明されていませんが、主に経口感染により体内に侵入すると考えられています。多くの場合、免疫機能が十分でない5歳頃までの幼少期に感染します。
- 井戸水など衛生環境が整っていない水の摂取
- ピロリ菌に感染している大人から子どもへの食べ物の口移し
- 感染している家族との食器の共有
- 糞便に汚染された食物や水の摂取
現在では水道の整備が進み、衛生環境が改善されたため新規感染は減少していますが、感染している親から子どもへの感染は今でも起こっています。成人になってからの新たな感染は稀とされています。
ピロリ菌をそのままにしておくとどうなる?
ピロリ菌感染を放置すると、胃がんや胃潰瘍、機能性ディスペプシアなどの発症リスクが高まります。長期間のピロリ菌感染により、胃粘膜の慢性的な炎症が続くと、胃粘膜が萎縮し萎縮性胃炎となります。さらに進行すると腸上皮化生という状態になり、胃がんの発症リスクが著しく高くなります。
ピロリ菌の除菌治療は、胃がんになる確率を大幅に低下させます!
ピロリ菌の除菌治療により、胃がんの発生率が大幅に減少する(2分の1 ~ 3分の1程度に!)ことが研究で確認されています。また、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発もほぼ抑制されます。さらに、次世代への感染予防のためにも除菌治療は重要です。当クリニックでは、ピロリ菌感染が確認された患者様には積極的な除菌治療をおすすめしています。
ピロリ菌の検査
(あなたに最適な検査を
ピロリ菌認定医の院長が
ご提案します)
内視鏡を使用しない検査
尿素呼気試験
検査薬を服用し、その前後の呼気を採取して調べる検査です。ピロリ菌のウレアーゼ活性により生じる二酸化炭素量を測定します。体への負担が少なく、最も精度が高い検査法です。ただし、胃散を抑える薬を内服している方や、当日食事を摂取された方は検査の対象外となります。
血液検査(抗体測定)
血液中のピロリ菌抗体を測定します。簡便な検査ですが、除菌後も陽性反応が続く場合があるため、除菌判定には適しません。
便中抗原測定
便の中のピロリ菌抗原を測定します。体への負担がなく、現在の感染状態を確認できる検査です。
内視鏡を使用した検査
迅速ウレアーゼ試験
胃カメラで採取した組織でピロリ菌のウレアーゼ活性を測定し、その場で結果が分かる検査です。ただし、胃散を抑える薬を内服している方や、当日食事を摂取された方は検査の対象外となります。
鏡検法
採取した組織を染色し、顕微鏡でピロリ菌の有無を直接観察します。
培養法
採取した組織を培養し、ピロリ菌の増殖を確認します。薬剤感受性試験も可能です。
ピロリ菌検査の費用
保険診療の場合
1割負担 | 2割負担 | 3割負担 | |
ピロリ菌検査+除菌治療 | 約1,500~2,000円 | 約3,000~4,000円 | 約5,000~6,000円 |
※目安金額です
自費診療の場合
内容 | 費用(税込) | ||
ピロリ菌検査 | 胃カメラを使用する検査 | 迅速ウレアーゼ試験(内視鏡) | 3,300円 |
胃カメラを使用しない検査 | 尿素呼気試験(呼気検査) | 5,500円 | |
ピロリ菌抗体測定(採血) | 2,200円 | ||
ピロリ菌抗原測定(便検査) | 2,200円 | ||
除菌治療 | ○○円 |
ピロリ菌除菌治療の流れ
1受付・診察
特に事前予約は必要ありません。受付時・診察時にピロリ菌検査をご希望の旨をお申し付けください。
2胃カメラ検査・ピロリ菌検査
まず胃カメラ検査を行い、胃の状態を確認します。その後、ピロリ菌の有無を調べる検査を実施します。
3一次除菌治療
ピロリ菌感染が確認された場合、胃酸分泌抑制薬1種類と抗生物質2種類を1日2回、7日間服用していただきます。除菌成功率は約90%前後です。
4除菌判定(服用終了から2ヶ月後)
薬の服用終了後、約2ヶ月の期間をおいてから除菌できたかどうかを確認します。主に尿素呼気試験や便中抗原検査で判定します。
5二次除菌治療(必要な場合)
一次除菌で除菌できなかった場合、抗生物質の種類を変更(メトロニダゾールに変更)して、再度7日間の治療を行います。二次除菌までの成功率は約95%以上です。二次除菌で効果が得られなかった場合でも、三次除菌・四次除菌を行うことは可能です。ただし、三次除菌以降は自費診療となります。
6治療終了・経過観察
除菌が成功した場合、治療は終了です。再感染することは非常に稀ですが、除菌に成功しても胃がんのリスクは大幅に低下するものの、完全になくなるわけではないため、年に1回の胃内視鏡検査を推奨しています。定期検査をすることで、将来胃がんになっても、早期発見できるため外科手術ではなく、内視鏡治療で完治できる場合が多くなります。