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虚血性大腸炎

虚血性大腸炎とは

虚血性大腸炎は、何らかの原因で大腸の粘膜に十分な血液が通らなくなること(虚血)で生じる病気です。突然の血流障害により大腸に炎症が起こり、血便や腹痛を引き起こします。虚血性大腸炎は、虚血の程度により「一過性型」「狭窄型」「壊疽型」の3つに分類されます。多くの症例(約90%)は一過性型で、保存的治療により回復しますが、狭窄型や壊疽型では手術が必要になることもあります。また、4人に1人程度の割合で再発しやすいことも特徴です。

虚血性大腸炎の症状

虚血性大腸炎の症状
  • 突然の腹痛:特に左下腹部の強い痛み(下行結腸・S状結腸の血流障害による)
  • 下痢:水様またはゼリー状の下痢
  • 血便:便器が真っ赤になるほどの血便
  • 吐き気・嘔吐
  • 冷や汗
  • 発熱
  • 腹部膨満感

症状の経過としては、まず突然の腹痛で発症し、その後下痢が起こり、粘膜傷害が悪化すると血便が生じるという流れが典型的です。このような症状がございましたら、神戸三宮きのした内科 消化器内視鏡クリニックへご相談ください。

虚血性大腸炎になる原因

血管の要因

  • 動脈硬化:糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病によって発生
  • 脱水症状:血液がドロドロになり血流が低下
  • 血液凝固異常:血栓ができやすい状態

腸管の要因

  • 便秘:最も頻度が高い原因。強くいきむことで腹圧が上昇し、大腸粘膜への血流が低下
  • 浣腸・下剤の使用:急激な腸の蠕動運動亢進
  • 腸管内圧の上昇

その他の要因

  • ストレス:交感神経の活性化により血管が収縮
  • 加齢:血管の老化により血流障害が起こりやすい

虚血性大腸炎と
虚血性腸炎の違い

虚血性大腸炎と虚血性腸炎は、どちらも血流が悪くなることで腸に炎症や障害が起こる病気ですが、主に影響を受ける部位が異なります。

虚血性大腸炎

  • 大腸(特に左側の下行結腸・S状結腸)に血流障害が起こる
  • 典型的な症状:腹痛、血便、下痢
  • 比較的軽症で、自然に改善することも多い
  • 虚血性腸疾患の中で最も頻度が高い

虚血性腸炎

  • 小腸に血流障害が起こる病気で、虚血性大腸炎より稀
  • 症状:腹痛、嘔吐、吐き気、腹部膨満感
  • 大腸より深刻なケースが多く、外科的治療が必要になることもある

虚血性大腸炎をほっとくと
どうなるのか

虚血性大腸炎を放置すると、炎症が進行して潰瘍を形成し、さらに以下のような重篤な合併症を引き起こす可能性があります。

  • 腸管狭窄:炎症が強いために腸管が狭くなる
  • 腸閉塞:便の通過障害により腸管が詰まる
  • 腸管壊死:血流が完全に途絶えて腸管組織が死んでしまう
  • 腸穿孔:腸に穴が開く

虚血性大腸炎の方が
食べてはいけないもの

虚血性大腸炎の回復を早め、再発を防ぐためには、大腸に負担をかけない食事管理が重要です。

脂肪分が多い食べ物

揚げ物、脂肪の多い肉(バラ肉、ロースなど)、バター、ラードなどは消化に時間がかかり、腸に負担をかけるため避けましょう。

刺激の強い食べ物

辛い食べ物、唐辛子、カレーなどのスパイス類、わさび、からしなどは腸を刺激し、炎症を悪化させる可能性があります。

繊維が多すぎる食べ物

生野菜、全粒穀物、キノコ、豆類、ごぼう、たけのこなど食物繊維が多い食品は、急性期には腸を刺激するため避けます。

アルコール

アルコールは腸に炎症を引き起こしやすく、血管を収縮させて血流を悪化させるため、完全に控えることが推奨されます。

カフェイン

コーヒー、紅茶、緑茶、エナジードリンクなどのカフェインを含む飲み物は、腸の働きを過剰に刺激するため避けましょう。

炭酸飲料

炭酸が腸を膨張させ、腹部の不快感やガスを引き起こし、腸管内圧を上昇させることがあるため避けることが推奨されます。

甘いお菓子・加工食品

糖分が多い食品やスナック菓子、加工肉などは消化が悪く、腸に負担をかけるため控えましょう。

虚血性大腸炎の検査

虚血性大腸炎の診断には、症状が他の大腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病、感染性腸炎、大腸憩室炎など)と似ているため、詳しい検査による鑑別が重要です。

 問診・診察

症状の発症時期、腹痛の部位、便の性状、既往歴(特に生活習慣病)、便秘の有無、服用薬などを詳しくお聞きします。その後、腹部の触診や聴診を行い、圧痛の有無や腸の動きを確認します。

大腸カメラ検査

大腸の粘膜を直接観察し、虚血性大腸炎に特徴的な所見を確認する最も有用な検査です。粘膜の発赤、浮腫、びらん、縦走潰瘍などが認められ、虚血粘膜と正常粘膜の境界は比較的明瞭です。ただし、炎症の活動期や腸管壊死の所見がある場合は、穿孔のリスクがあるため慎重に行う必要があります。

大腸カメラ検査について詳しくはこちら

虚血性大腸炎の治療

虚血性大腸炎の治療は、病型によって異なりますが、基本的には腸管を安静にする保存的治療が中心です。

保存的治療

絶食・安静

まず腸管を休ませるため絶食とし、安静を保ちます。この間、脱水予防のため点滴で水分・栄養補給を行います。

段階的な食事再開

症状が落ち着いたら(通常1~3日後)、水分から開始し、重湯、お粥と段階的に食事を再開します。問題がなければ1~2週間程度で通常食に戻ります。

薬物療法

薬物療法感染の可能性がある場合は抗生剤を投与したり、腸管の血流改善薬や整腸剤を使用します。

手術療法

腸管狭窄による通過障害がある場合や、腸管壊死、大量出血、穿孔などの重症例では緊急手術が必要となります。壊死した腸管の切除や、狭窄部の切除・吻合などが行われます。
入院治療が必要な場合や、外科手術が必要な場合には速やかに提携病院をご紹介します。