過敏性腸症候群(IBS)とは
過敏性腸症候群とは、腸にポリープや炎症などの器質的な疾患がないにもかかわらず、慢性的に腹痛を伴う下痢や便秘などの症状が現れる病気です。主な原因として、ストレスや不安などの心理的要因により自律神経が乱れ、腸の蠕動運動に異常が生じることが考えられています。また、腸と脳は密接な関係(脳腸相関)にあるため、精神的なストレスが腸の働きに直接影響を与えます。
腹痛や腹部の不快感とともに、便通異常(下痢・便秘)を繰り返し、排便により症状が軽減することが特徴的です。神戸三宮きのした内科 消化器内視鏡クリニックでは、大腸内視鏡検査などで器質的疾患がないことを確認した上で、患者様お一人おひとりの症状に応じた治療を行っております。
過敏性腸症候群の症状
過敏性腸症候群の主な症状は以下の通りです。

- 数週間~数ヶ月にわたって、お腹の不調や痛みが続いている
- 下痢や便秘が慢性的に続いている、または交互に繰り返している
- 排便をすると腹痛や不快感が一時的に和らぐ
- 排便しても残便感がある
- ストレスを感じると症状が悪化する
重症度をセルフチェック
- お腹の調子が長期間(数週間)不調、もしくは痛みがある
- 便通異常(下痢や便秘)が続いている
- 便の形が悪い時期が続いている
- 排便をすると痛みが一時的に和らぐ
- 排便の回数が不規則
- 排便しても残便感がある
- 便秘が続き、便が出たとしてもコロコロとした便しか出ない
上記の症状がある方は、過敏性腸症候群の可能性があります。ただし、以下の症状もある場合は、より重篤な病気の可能性があるため、早急に当クリニックへご相談ください。
- 便に血が混ざる
- 体重が減少している
- 夜中におなかが痛くなり目が覚める
過敏性腸症候群の4つの種類
下痢型
急激な腹痛とともに、1日に複数回水のような便が排出されるタイプです。突然症状が起こるため、通勤・通学時や外出に対して不安を抱くようになり、その不安やストレスからさらに症状を悪化させてしまう方も少なくありません。
便秘型
腸管のけいれんによって便が滞ってしまうタイプです。強くいきまないと便が出ない、ウサギのフンのようなコロコロとした小さな便が出る、排便時に腹痛がある、残便感があるなどの症状が特徴的です。
混合型
激しい腹痛を伴った便秘と下痢を交互に繰り返すタイプです。数日ごとに便秘と下痢が入れ替わるように現れ、ストレスを感じると症状がより不安定になることが特徴です。
分類不能型(ガス型)
上記3つのタイプに分類されない症状を示すものを分類不能型と言います。特に「ガス型」と呼ばれるタイプは、お腹にガスが溜まりやすく、以下のような症状が特徴的です。
- お腹が張る(腹部膨満感)
- 頻繁におならやげっぷが出る
- おならの臭いが気になる
- 人前でガスが出ることへの不安が強い
- 腸にガスが溜まることによる腹痛
過敏性腸症候群になる原因は
ストレス?
過敏性腸症候群の主な原因はストレスと考えられていますが、「ストレス=気のせい、気の持ちよう」ではありません。
ストレスが腸に影響を与えるメカニズム
- 脳腸相関:腸は「第二の脳」とも呼ばれ、脳と密接な関係があります
- ストレスホルモンの分泌:強いストレスを感じると、脳下垂体からストレスホルモンが分泌されます
- 自律神経の乱れ:ストレスにより自律神経のバランスが崩れ、腸の蠕動運動に異常が生じます
- 腸の過敏性の増大:ストレスにより腸が刺激に対して過敏になります
過敏性腸症候群の検査
過敏性腸症候群の診断では、まず器質的疾患(大腸がん、潰瘍性大腸炎、クローン病など)がないことを確認することが重要です。当クリニックでは以下の検査を実施しています。
- 問診
- 血液検査・尿検査
- 便潜血検査
- 大腸内視鏡検査
過敏性腸症候群の治療や治し方
当クリニックでは、患者様の症状やライフスタイルに合わせて、生活習慣の改善と薬物療法を組み合わせた治療を行います。
生活習慣の改善
基本的な生活改善

- 規則正しい生活リズムの確立(同じ時間の就寝・起床)
- 十分な睡眠時間の確保
- 適度な運動(ウォーキング、ストレッチなど)
- ストレス管理(趣味の時間確保、リラクゼーション)
食事療法
- 1日3食、規則正しい食事
- よく噛んでゆっくり食べる
- 暴飲暴食を避ける
- 高脂肪食、アルコール、カフェイン、香辛料を控える
薬物療法
全タイプ共通

- 消化管機能調節薬:腸の運動を整える
- プロバイオティクス(整腸剤):腸内環境を改善
- 高分子重合体:便の水分バランスを調整
下痢型
- セロトニン3受容体拮抗薬:腸の運動異常を改善
- 止瀉薬:下痢症状を抑制
便秘型
- 粘膜上皮機能変容薬:便を柔らかくする
- 緩下剤:便秘を改善